第五 私の投獄と試練(2)

第五 私の投獄と試練(2)


私達は同志を集め、協議していたが、
十二月二十六日の夕方過ぎ頃、
突然大勢の警官や憲兵が来て、私達の宿泊している宿を取り囲んだ。

私は、これは尋常ではないと思い、自室にこもって、静かに聖書を読んでいた。しばらくして、警官らが、私の部屋に入ってきて、
愛宕下の警察署より出頭命令が出ていることを告げた。
私は、ただちに聖書を持って、彼らに従って行った。(このとき、私が聖書を持って行ったのは、
再び帰ってくることができないかもしれないと考えたからである。)

警察署に着くと、同じ宿に泊まっていた同志達が何人かいた。
一人づつ警官の前に呼び出され、退去の命令書を渡された。
見てみると、保安条例により、二年半の退去を命ずる、と書かれていた。
私が、何の理由があって我々を退去させるのかと尋ねると、
その警官は、理由を説明する必要はない、
命令を受けるのか、受けないのか、とだけ言った。
私は、理由も分からずに退去するなどできない、と答えた。
すると、彼は、警視庁二局に行け、と言い、
私を別の場所に移し、縄で縛った上で、
二人の警官を前と後ろに置いて、警視庁に連行した。

途中、鹿鳴館を通り過ぎた。
大臣等が意気揚々として舞踏会を催し、遊興にふけっており、
その声はまるで、自分たちの安泰を誇示しているかのように聞こえてきた。
警視庁に着くと、あたかも、主イエスが捕らわれた夜、
祭司長宅の中庭で人々が焚き火をして集まっていたように、
警視庁の小間使いとおぼしき者達が火を囲んで暖をとっているのを見た。


私は、事務室に連れて行かれ、何故退去命令に従わないのかと尋問を受けた。
私は、そもそも保安条例なるものを知らない、と答えた。
警官は、保安条例は昨日(安息日=日曜日)発布されたと説明し、
その写しを私に示した。
しかし、私はもともと、治安を害する意図はなく、
ただ言論をもって平和に政府に陳情したいだけであって、
治安を妨害すると言われて、これに易々と従うのは、納得がいかない、と言った。
我々の建白書はすでに元老院に提出していたし、
毎日権力者を訪ねては、意見を述べていたので、
政府も我々の志を承知していただろう。
我々は、何も他意はない、それなのに、
我々が治安を妨害すると見なされ、
退去するのは、良心に背くことになる、と。
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by hokkaido-revival | 2010-12-03 18:26 | 『余が信仰の経歴』 正編1-5  

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